現場と経理の間で奮闘中!うちの入金管理、こうしてます
はじめに
建設業における入金管理は、経理実務の中でも特に注意を要する業務のひとつです。請求から入金までのタイムラグが長くなりがちで、取引先によって支払条件も異なるため、しっかり管理しておかないと資金繰りに影響を及ぼすリスクもあります。
本記事では、中小建設業の現場で実際に行っている入金管理の方法について、Excelを使った実務的な手順や、未入金を防ぐための工夫をご紹介します。経理業務に携わる方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
Excelでの入金管理の実務
建設業では工事ごとの請求・入金管理が基本となるため、一般的な売掛管理とは異なる視点での記録と把握が求められます。自社では、工事台帳をベースにしたExcelシートで入金状況を管理しており、請求・入金に関する項目を整理して一覧化しています。
使用している主な項目(列)
カテゴリ | 主な項目 |
---|---|
工事情報 | 工事番号、工事場所、工事名、着工日、竣工日、区分1(元請/下請)、区分2(業種) |
請求情報 | 請求番号、請求日、取引先名、請求金額 |
入金状況 | 入金日、入金額、残額、振込手数料、安全協力費、値引、入金方法 |
担当者・備考 | 元請担当者、自社担当者、備考欄 |
管理上のポイント
- 工事番号単位での整理により、各工事の請求・入金の進捗を明確に把握できます。
- 振込手数料や安全協力費、値引等の項目を個別に記録することで、請求金額と入金額の差異を正確に把握できます。
- 残額欄を設けることで、未入金や一部入金案件を早期に特定できます。
Excelを選んだ理由と活用の工夫
会計ソフトにも入金管理機能はありますが、自社の運用に完全にフィットさせるには自由度が足りませんでした。そのため、より柔軟にカスタマイズできるExcelを選び、自分仕様で管理シートを構築しています。
- フィルター機能を多用し、工事台帳を土台に月次資料・元請別一覧・未入金リストなど、さまざまな管理帳票を派生的に作成。
- 色分けなどの視覚的な装飾は行っていませんが、シンプルな構成を維持することで誰が見ても把握しやすい状態を保っています。
入金チェック体制と情報共有の工夫
日々の入金管理は、チェックのタイミングと社内での情報共有がカギになります。特に月末や月初は入金確認が集中するため、ルールを決めておくことで抜け漏れを防ぎやすくなります。
月次・週次での運用ルール
- 入金予定表を月初に更新し、月内に入金される見込みを明示
- 毎週1回、未入金リストを確認し、リマインドの必要がある取引先を抽出
- 請求書発行済みで入金がない案件には、色をつけて可視化する(例:グレー背景、赤文字など)
情報共有のポイント
- 担当者との連携を円滑にするため、入金状況や照合ミスがあった場合は逐一記録(備考欄にメモ)
- 支払条件の変更や例外対応があった場合は、ファイル共有やチャットツールで全員に周知
- 新人担当者にもわかるよう、Excel内に簡単な注意点メモや「入力ルール」シートを用意
こうした地道な取り組みが、入金管理の精度を上げ、社内の混乱や問い合わせの削減につながります。
おわりに
入金管理は単なる「数字の確認作業」ではなく、現場・取引先・社内担当者との橋渡しを担う、大切な調整役でもあります。請求のタイミングや入金元の確認、トラブルへの柔軟な対応まで、地道で気の抜けない作業の積み重ねが、会社の資金繰りを安定させる土台となります。
今回ご紹介したExcelによる管理方法や、請求漏れを防ぐための“アンテナ”、振込トラブルへの対応策などは、すべてを一度に整えるのは難しいかもしれません。それでも、できるところから一歩ずつ仕組みを見直していくことで、着実に精度は高まっていきます。
実際、私が現在使用している工事台帳も、日々の業務の中で気づいた課題や、税理士・社労士・行政書士といった専門家とのやり取りを通じて、少しずつ項目を追加・改善してきたものです。
同じような立場で経理業務に取り組んでいる方にとって、少しでも実務のヒントになる部分があればうれしく思います。
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